乙女は白馬に乗った王子を待っている

次の日の朝、さやかは、隣りの部屋から聞こえてくる明るい笑い声で目をさました。

あれ…、誰かいるのかな……?

複数の声が同時に聞こえて来るのに気付いて、寝ぼけた頭でぼんやりその声を聞いていると、どうも片方の声は男の声のようだった。

……と、気付いてから、急に、さやかの頭がすーっと冴え渡って、ものすごい早さで回り始めた。

男!?

全神経を耳に集中させる。聞き覚えのある声だった。

翔太!?

胸の鼓動が急に早くなった。全身がカーッと熱くなる。

どうしよう……、翔太とゆり子は、さやかが帰って来たことを知らないに違いなかった。

さやかは、なおも息をのんで隣りの気配をうかがった。
聞き耳を立てていると、二人はどうやらゆり子の部屋から出て、リビングでコーヒーでも淹れているようだ。

ゆり子のはしゃいだ声が耳に入って来た。


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