乙女は白馬に乗った王子を待っている
ま、また……、社長も何と大胆なことを。
ゆり子が青ざめるのにも気付かず、さやかは嬉しそうに話を続ける。
翔太もボーゼンとして、二人の話をだまって聞いていた。
やっぱりショックみたいだ。
「で、どこに行くの?」
「うん。上高地。」
「上高地?」
渋いなあ〜、軽井沢じゃない、ってとこがまた。
「帝国ホテルがとれたんだって。」
「て、帝国ホテル!?上高地の!?」
ゆり子は目をひんむいた。
帝国ホテル!? 社長ってば、一体、どんなツテを使ったんだ!?
がっくりとしている翔太とゆり子もなんのその、さやかはテレビの前にどんと座ると満面の笑みで二人に話しかけた。
「ほら、ドラマが始まるよ。見るでしょう!?」
いつもよりも高いトーンの声だ。はしゃいでいるのを隠しもしないで、浮かれまくっている。
さやかの勢いに圧倒された二人は、毒気のぬけたような顔でちんとコタツの前に座った。
どうしてもむっつりとした顔になってしまう。
まただ……。
なんだか、重苦しい、イヤな感じのもやもやが胸に広がる。
何だろう、どうしてこんなに嫌な気持ちになるんだろう……。
ゆり子はちらっと翔太の顔を見た。
翔太は、ゆり子の視線に気付くと、弱々しい微笑みを返した。