乙女は白馬に乗った王子を待っている
「すごいね、いつも練習してるの?」
「土曜が休みの時はねー。体がなまっちゃうしさ。」
翔太は話しながらゆり子の前でリフティングをする。
ぽん、ぽん、ぽんとリズミカルにボールが空中にあがる様を見ていると飽きなかった。
「好きなんだねー、ホントに。」
「お? おお??」
ゆり子が話しかけて集中力が削がれたのか、コントロールしきれなくて、ボールはあえなく地面に墜落してしまった。
翔太がゆり子の隣りに座る。
「いい天気だなー。」
「そうね。」
きっと今日はドライブ日和だろう。
「何か食ってもいい?」
翔太はコンビニの袋をがさごそさせた。
「時間があればお弁当作ったんだけどね。」
「しょうがないよ、今朝、急に決めたから。」
言いながら、翔太はおにぎりをほおばっている。
その顔を見て、ゆり子はくすりと笑った。
「鼻の頭にごはんつぶ、ついてるよ。」
ゆり子がごはんつぶをつまむと翔太は照れくさそうな顔をして笑った。
こういう甘酸っぱいようなくすぐったいような感覚は久しぶりのことだ。