乙女は白馬に乗った王子を待っている
社長って言ってもピンキリですから

「私も、高橋社長は、社長とは言っても、名ばかりでお金だって全然ないし、
 むしろ借金抱えて倒産する可能性のほうがずっと高い、って念を押したんですけど。
 それでも良いっていうから、一度、お願いできませんかねえ?」

「……合コンか〜、よし、やろう!社長とか専務を取り揃えればいいんだな?」

ノリのいい返事だった。

「はあ。でも、いいんですか?さやかって30過ぎのフリーターですよ?」

「分かってるよ。来週の金曜でいいか?」

「はい。……あ!」

ゆり子はドラマのことを思い出した。

まあ、大丈夫だろう。アレは深夜ドラマだから、始まるまでには帰って来れるだろう。




ゆり子は会社を出ると近くの大型書店に立ち寄った。

研修をするのに何か参考になる本などないか探すためだった。

本の出費は正直イタいけれども、この5日間を無事に乗り切るためには、背に腹は代えられない。

何かとっかかりのようなものが欲しかった。


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