乙女は白馬に乗った王子を待っている

結局その日はそのまま解散となった。
ゆり子は夕方、社に戻って来た高橋に今日あった出来事を報告した。もう涙目である。

「もう、アタシに研修なんて無理ですよ。
 山村さんは挨拶だってロクにできないし、他の人たちだって、すぐ怒っちゃうし。」

「でも権藤が辞めたら、他にやるヤツいなくなっちゃうじゃないか。」

「田中さんに戻って来てもらってくださいよ。
 それに、どっちみち派遣する仕事なんてないんでしょう。」

「それがな〜〜、取って来たぞぉ。明後日面接したいって。」

手を振りかざして、ふっふっふっと威張ったように言う。まるで、100点を取った小学生がテストを手に母親のところに駆け込んで来るよう無邪気な笑顔を見せた。ゆり子は思わず高橋の頭をなでなでしたくなってしまう。高橋にはどこか憎めない可愛さがあった。

「本当ですか!?」

「……ちょっとコネのあるところだからなあ、ひどくなければ、山村さん、採ってくれるぞ。
 ……というわけで、研修はあと明日しか出来ないから、しっかり頼みます。」

さらにプレッシャーを感じるゆり子である。

あんな……、あんな言葉遣いで面接を乗り切れるのか!?
っていうか、あの調子で受け付けに来た人たちに喧嘩を売ってくんじゃないのか!?



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