乙女は白馬に乗った王子を待っている

「……うわあ〜〜。山村さん、明日来てくれるかなぁ。他の人も来ますかねぇ。
 オバチャンたちなんて、パートでレジぐらいしか仕事ないでしょう。だったら何もウチに登録なんて……」

「オバチャンたちは、挨拶とかそういう基本的な事はどうだった?」

「あ、一人はずっとパートしてたみたいで、普通ですよ。あとの二人はビミョウですねぇ。パソコンとか全然使えそうもないし。」

「じゃあ、事務仕事でもたつかないように、雰囲気とか流れとか慣らしてあげてくれる?
 心構えが違ってくると思うから。小ちゃいところで一人、探してるところがあるんだ。」

「何ですか、社長、いきなり仕事取って来てるじゃないですか。それ、アタシが応募に行っていいですか?」

「ここより潰れそうなとこだぞ。」

「……やっぱり。そんなとこ、紹介したら返って悪いですよ?」

「大丈夫。アイツは何とかするだろうから。」

「知り合いなんですか?」

「まーな。来週の合コンにも来るってよ。」

「えー、そんな潰れそうな会社じゃなくて、もっとまともな会社の社長と知り合いになりたいですぅ。」

「ここにいるじゃないか。」

高橋が、自分の胸をトントンと叩くので、ゆり子は吹き出してしまった。

「田中さんを辞めさせたくせに。それに、開店休業状態じゃないですか。
 しかも、研修とかわけわかんないことやってるし。かなり潰れそうですよ。」

「それもそうだな。」

「そこ、認めるんだ!?」

「事実だからしょうがない。」

そう言って高橋は笑った。




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