乙女は白馬に乗った王子を待っている
ゆり子の心配に反して、山村は次の日もきちんとやって来た。
しかも、5分前に到着。
驚いたことに、その日は落ち着いた感じのブラウスとスカートにパンプスという出で立ちだった。
「山村さん。そういう服、持ってるんじゃないですか〜。いやあ、受付嬢に見えますよ!」
ゆり子が思わず褒めると、月星(るな)はツンとした顔で憎らしいことを言う。
「あのクソババアたちに言われ放題だからね。」
「クソババアとか絶対使っちゃいけませんよ!社会人は。」
ゆり子の方が冷や汗をかいて慌てて山村に指導を入れる。
その日は、山村と大げんかをした村上さんは来なかった。無断欠勤(?)だ。山村は勝ち誇ったように言い放った。
「あれぐらいで、来るのやめちゃうなんて、働けるわけねーじゃん!仕事を舐めてるよなッ。」
……てか、アンタ、カレシに振られて三日間遅刻した、とかいってなかったっけ!?
心のなかでそんなツッコミを入れずにはいられないゆり子である。
しかし、一々過剰反応していたら、ゆり子の神経も参ってしまうし、いたずらに登録者たちを興奮させるだ、ということに気付いてきた。
二日間、山村とオバチャンたちに振り回されてゆり子もそれなりに成長したらしい。
それから、何とかその日の研修を無事終えると、月星(るな)は挨拶と電話の受け答えだけは何とかかんとか出来るようになった。
その後、顔合わせの話をすると、月星(るな)はさすがに嬉しそうな顔になった。