乙女は白馬に乗った王子を待っている
その一週間は、いきなりの電話番にいきなりの研修、面接の対応などなれないことばかりで、金曜日帰るころにはゆり子はぐったりしていた。
一つ驚いたことは、山村と、もう一人、オバチャンの派遣が決まった事である。
高橋がどんなマジックを使ったのか。
二人とも来週の月曜日から出勤である。こんなに早く決まるとは思っていなかったので、ゆり子は正直驚いた。
「その顔でうまいこと言って、丸め込んだんじゃないですかぁ。」
ゆり子が軽口をたたくと、高橋は自慢げな顔をした。
「わかる?オバチャンの派遣を決めて来るときはさ、担当者が年増の独身女性だったんだよなァ。
オレのつぶらな瞳を見てたら、ノーと言えなくなっちゃったってわけ。」
……認めるのは悔しいが、何となくわかる気がする。
高橋は、爽やかなイケメンなのに振る舞いに嫌味がなくて表情にも可愛げがあるから、つい…ほだされてしまうのである。
「社長〜〜、ホストでもやってた方がいいんじゃないですか。」
「オレがホストなんてやったら、世の女がみんな破産しちゃうじゃない。」
この……過剰なまでの自信がなければねぇ……。
「………その過剰な自信、どこから来るんですか。」
ゆり子がほとほと呆れた声を出しても、高橋はいけしゃあしゃあと返事をする。
「だって、自慢じゃないが、オレが本気になって落とせなかった女なんて今までいないんですよ〜。
どう? 権藤もオレと付き合ってみる? スリリングな恋愛ができるよ。」
けっ!アンタみたいな誠意のカケラもないヤツなんか。付き合えるかい。
「ご遠慮させて頂きます。私は、堅実で誠実な人の方がいいですから。」
コンビニの袋を手にしながら笑顔を見せる翔太の顔がぱっと頭に浮かんで、ゆり子は顔を赤らめた。