乙女は白馬に乗った王子を待っている

 会社で何かあったですって?
 
 ええ、ありましたよ、思いっきしありましたとも!
 
 今日はね、とうとう最後の事務員さんがやめちゃったんですよ。
 
 ついに、会社は社長と私だけになったんでございます。

 わーい! これで社長は私のもんだ……!

 ……って、違う、違う、違う!

 「アレ?でも、ゆり子さんて派遣じゃなかったっけ?」
 
 翔太はゆり子の嘆きを聞きながら首を傾げた。
 
 「そう。だから、本当なら、私も、今日で派遣打ち切りになるはずだったの。」
 
 「? じゃあ、良かったじゃん。」
 
 「いや、お金が貰えるならね……。今の会社、つぶれそうでお金出ないから行くのやめて下さいって、派遣会社から言われた……。」
 
 「大丈夫なの?」
 
 「いや、だから、次の派遣先を探さないと、と思ってるんだけど……」
 
 「だけど?」
 
 ゆり子が続けようとした時だ。さやかが、「キャー」と悲鳴をあげた。

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