乙女は白馬に乗った王子を待っている

「堅実で誠実なんて、そんな、つまんない男のどこがいいの?」

「テキトーなことをして会社を潰しかねない人よりは全然いいですよ。」

じろりと高橋の顔を睨んだ。

「権藤って、好きなヤツとかいるの?」

高橋が唐突に聞いたので、また、翔太のことを思い出して思わずどもってしまった。

「そっ、そんなこと、社長には関係ないじゃないですか。」

「なんだ、図星か。じゃ、オレは他のコを探すかな、今度の合コンでは。」

白けたような声になったのを潮に、ゆり子は事務所を後にした。

外は結構いい時間である。

ゆり子はふと思いついてかつての後輩の麻衣に連絡をとって、軽く一杯やらないか、と誘ってみた。
たまたまヒマだったらしく、二人は下北沢の一杯飲み屋で落ち合った。

路地のなかにある小汚い店だが、とにかく安いので、そこでビール一杯と焼き鳥数本を頼んでさっと飲むのが麻衣とのお決まりのコースだった。それでもゆり子は、うっかり頼みすぎないように、店に入る前にコンビニのおむすびを二つほど食べて腹ごしらえをした。




< 50 / 212 >

この作品をシェア

pagetop