乙女は白馬に乗った王子を待っている
駅前で別れた後ほろ酔い気分で帰ると、さやかがテレビの前にちんとお行儀良く正座せんばかりに座っていた。
こたつの上には、(第3の)ビールといくばくかのおつまみが載っている。
さやかは、イチゴミルクキャンディをほおばっていた。
「ゆりちゃーん、もう始まるよ〜。」
少し声を上ずらせながら、嬉しそうにテレビの画面を見つめている。
ゆり子は、さきいかが少し残っていたのを思い出して、キッチンから持ってくる。
さやかの隣りに座った。
今日は4話目で、ドラマの話はいよいよぐちゃぐちゃな展開を見せ始めていた。
先週、有村美香とイケメン専務のちょっとしたすれ違いによって、お互いが誤解したところで終わっている。
虎視眈々とイケメン専務を狙う、ライバルの婚約者の策略によって、有村美香が、イケメン専務とライバルとのキスシーンを目撃してしまうのだ。
……いかにもありがちな話だった。
そして、ドラマはどこまでも主人公、有村美香の都合のいいように話が進んでいく。
この大ピンチを救うため、登場するのが、有村美香にホの字の同僚男性だった。
この同僚、むしろ可愛い女の子と言ってもいいぐらい、色白で目がぱっちりとした、草食系というよりはもはや植物系男子だ。
彼の汗はきっとレモンの香りがするに違いない。
……というような、物わかりのいい可愛い男の子が、地味OL設定の有村美香を慰める。
肉食系ツンデレイケメン専務か、
植物癒し系のキュートな年下男か。
何、次は塩系男子でも出てくんのか!?
どうして、何の取り柄もない地味なはずの有村美香ばかりいい男がたかるんだよ!?
そして、有村美香のどこがどう地味なのか。(めっちゃキラキラしてるやんか)
50字以内で簡潔に説明せよ、
……と、ドラマ制作者に言ってやりたい。