乙女は白馬に乗った王子を待っている
決戦の金曜日
その金曜日、ゆり子はそれでも気合いを入れて合コン会場に向かった。
表参道のカジュアルなイタリアンである。改札に向かうとさやかとゆり子はすでに先に来ていた。
「何だ、権藤先輩、なんだかんだ言ってやる気満々じゃないですか〜。この前はあんなに社長の悪口言ってたのにィ。」
麻衣はゆり子の姿を一目見るなりキナ臭い発言をする。
だから、アンタは会社でいじめられるんだよ、ったく!
ピンクのアンサンブルに短めのふわっとしたスカートはそれなりに女らしい。普段パンツばかりのゆり子だから、スカートにヒールというだけで、特別感が出てしまう。
「アンタたちに合わせてあげただけじゃない。」
ゆり子もさやかと麻衣の服装をじっくり見ながら、フンと鼻をならした。
さやかは、花がらのフレアスカートのワンピースに厚底のサンダルという、女子大生のような出で立ちだった。
ばっちり膝が見えてるにも関わらず、痛さを感じさせないのが、さやかのあっぱれなところである。(30超えてるくせに。ロリ顔は得やな)
バービーのようなメイクと相まって、お人形さんのようだった。
「暗めのところだといいですね、さやかさん。しわが隠れますから。」
麻衣はさやかの顔をまじまじと見ながら呟く。
「ま、さやかさんは、永遠の乙女ですから、大丈夫か!」
ア、アンタはまたいらんことを〜!
先輩二人に対して遠慮のない物言いをする麻衣は、と言えば、シフォン素材のブラウスにリボンのついた紺色のプリーツのスカートと、いかにも清楚なOLの格好である。
少し落ち着いた装いが返って瑞々しさを際立たせるような爽やかな格好で、どう頑張ってもゆり子とさやかは麻衣の引き立て役になりそうであった。
「やっぱ、アタシ、アンタ、嫌いだわ。」
ぼそっと呟くゆり子の言葉に麻衣は笑い出した。
「何、僻んでるんですかぁ、さあ、いざ出陣、行きますよぉ〜♪」