乙女は白馬に乗った王子を待っている
三人が揃って件のレストランへ入っていくと、男性陣はすでに席に着いていた。さやかと麻衣の目の色が変わるのがわかる。多分、高橋を見たからだ。
「ちょっと、権藤先輩、すっごいイケメンじゃないですか。」
麻衣が興奮を抑えきれないようにゆり子の耳元でささやいた。
「あ、高橋社長? うん、良いのは本当に顔「だけ」だからね。忘れないでね。」
二人がこそこそ話をしている間に、さやかはちゃっかり高橋に愛想よく声をかけている。ゆり子は高橋に軽く挨拶をしながら、抜け目なく他の二人をじっくりと観察した。
一人は、ギリ、バーコードではない40代前半というところか。
気になるお腹は取りあえず見なかった事にするべきか?ちらりと手元を見ると、オメガの時計を手にしていた。
もう一人は、ストライプのスーツに明るめのピンクのネクタイと難易度の高い格好をしているにも関わらず、上手に着こなしている。
程よくムースをつけてとんがらせたヘアも今どきの爽やか好青年といった出で立ちだった。
ただ……、残念なことに、顔と格好の釣り合いが今ひとつ取れていなかった。
なかなかパーフェクトな男はいないものね……、麻衣が目配せでそんな風に話しかけて来る。さやかは、高橋(の顔)に目を奪われて、あとは何も見えてないようだった。
高橋は、というと、さっき事務所で見かけたのとまったく同じ格好だった。よれよれのシャツにしわのよったズボン。ぼさぼさの頭に無精髭さえうっすら生えている。お世辞にもイケてる姿とは言えないのだが、恵まれた容姿故、返って世間の荒波に立ち向かう一匹狼のような、ワイルドな色気が漂っていた。
確かにイケメンは得だ。