乙女は白馬に乗った王子を待っている
皆が席について、ビールが運ばれてくると、高橋が陽気な声をあげた。
「じゃあ、まあ、とりあえず乾杯と行きますか。」
「はいっ。じゃあ、高橋さん、かんぱーい。」
さやかが、高橋のグラスをカチンと鳴らした。まったくこういうことに関しては妙に気が回るというか、ぬかりがないというか、さやかは一番いいポジションを取るのがうまかった。
高橋が男性陣を紹介する。
一人は、ゆり子が聞いていた通り、高橋の知り合いのIT会社の社長らしかった。高橋の話と違っていたのは、その東城秀俊(とうじょうひでとし)とかいう社長は、結構小金を持っていて羽振りが良さそうだったことだ。
「ホラ、神林さん、東城のところで使ってもらってるんだ。」
「本当にありがとうございます。神林はちゃんと働いてますか?」
ゆり子は、東城にお礼を言いながら、神林さんの様子を聞いた。
「なかなか一生懸命やってくれてますよ。また、派遣をお願いするかもしれません。その時はよろしくお願いします。」
「ああ〜、良かったぁ。神林さん、ブランクが長かったから心配していたんですよ。」
ゆり子が安心のため息をつくと、高橋が微笑んだ。
「お、ちょっとは担当者らしくなってきたじゃないの。」
「担当者?いつの間にそんなことになったんですか。」
二人が話していると、さやかが割り込んで来た。