乙女は白馬に乗った王子を待っている
「もう内輪の話はここでしないで下さいよぉ、高橋さん。あ、ビールどうぞ。」
さりげなく高橋のグラスにビールを注ぐ。ゆり子がちらりと見回すと、麻衣はピンクネクタイの男と何やら盛り上がっていた。ゆり子は仕方なく、東城に話しかける。
「高橋社長とはどのようなお知り合いなんですか。」
「高橋?ああ、銀行に借金に行く時に何回か一緒になってねぇ。二人で銀行員にぺこぺこ頭下げててさ、お互い大変ですね〜なんて話したのがきっかけかなあ。で、その下げてた相手が、こっちの横山ってわけさ。」
東城は、ピンクネクタイの男を指差した。
「じゃあ、横山さんは銀行員なんですか。」
麻衣のテンションが上がるはずだ。
席に座る時は、テーブルの下で指で小さくバツ印を作っていたのに、今は横山のつまらない冗談にも声をたてて笑っていた。