乙女は白馬に乗った王子を待っている

ゆり子が慌てふためいていて、麻衣とさやかに救いの目を向けるが、二人ともそれぞれの相手に夢中でゆり子の送るサインにはまるで気がつかないようだった。
東城がふっと笑う。
 
「少し意地悪だったかな〜。ゆりちゃんのその鋭い目つきについ、挑戦したくなってしまった。
 高橋の気持ちがなんかわかるな。な、高橋。」

最後は高橋に向かって話しかけた。

「え!?」

高橋が、東城の方を振り向いたので、東城は高橋に話しかけた。

「お前がいつも言ってる通り、ゆりちゃんが可愛いって話だよ。」

「権藤が気に入ったの?」 

「気に入った、気に入った。」

「IT会社の社長さんに気に入られるなんて、玉の輿じゃない、ゆりちゃん。良かったね!」

さやかがすかさず割り込んで来た。

「あ、う、うん。そうかな?」

ゆり子が適当に相づちをうつと、東城もまんざらでもないようだった。

明らかに、高橋ーさやか、横山ー麻衣で固まってしまっている。
貧乏くじを引いたような気分で、それでもゆり子は東城の相手をしていた。

お開きの時間になる頃には、横山と麻衣はどこかに消えてしまっていたし、高橋はさやかの手を取って横に立っていた。
どうするの?とさやかの耳元にささやくと、先に帰ってて、という返事だった。


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