乙女は白馬に乗った王子を待っている
「専務……、私……、やっぱり専務のことが好きなんです……。」
涙を一粒こぼしながら、婚約者がイケメン専務にすがりついている。
イケメン専務は、婚約者のなりふりかまわぬ捨て身の告白に当惑しているようだった。
「なんかさ〜、この婚約者、腹黒いよねぇ……。
わざと、有村美香が見えるようにキスするし、今だってこれ見よがしに泣いちゃってさー。」
「好きだから必死なんじゃねーの?」
誠実で、単純な翔太らしいコメントだった。
そんなんだと、女に騙されるよ、と言ってやりたくなる。
世の女は結構腹黒いんだぞ。男を落とすためなら、ウソ泣きでほろりと涙を流すくらい朝飯前なんだから。
「ふーん……、だったら、翔太はさー、さやかに捨て身の告白するの?」
「え?」
「だってさ、高橋社長に取られちゃうかもよ、このままじゃ。」
痛いところを突いたのか、翔太は黙りこくってしまった。無言の二人の前でドラマはさらにドロドロの展開を見せる。