乙女は白馬に乗った王子を待っている
「あ!イケメン専務が婚約者を抱きしめちゃったよ〜〜。有村美香はどうなるの?」
「この婚約者、いちずだもんな……。」
「えー、この婚約者が?計算してるだけでしょ??」
テレビの画面は、綺麗に涙をこぼす婚約者の顔をアップでうつしている。美人が、そっといじらしく泣きはらす姿は申し分のない画だった。
「ゆり子さん、ちょっとドライすぎない? こんな綺麗な人が泣きながら告白してくると、ついホロッとしちゃうもんだよ、男ってのはさ。」
「そうなの?」
「そんなもんだよ。」
ゆり子は、黙ったまま、じっと翔太を見つめた。
「な、何、ゆり子さん。オレ、なんかヘンなこと言った?」
ゆり子は、自分の顔を翔太にぐいっと近づけた。
「本当にそうなの? ホロッとしちゃうの?」
「あ、ああ……?」
目の前、10センチの距離にゆり子の顔が迫ってきて、翔太はたじろいで後ろに後ずさる。
ゆり子はそのまま翔太の唇に軽く自分の唇を重ねた。
「!?!?!」
翔太は目を白黒させている。
「あたしの気持ち、全然気がつかなかった?」
翔太は、潤んだ瞳でささやくゆり子の顔をじっと見つめていた。