乙女は白馬に乗った王子を待っている
ふと横を見ると、40過ぎたおっさんが、目尻を下げて細い目を一層細くして嬉しそうな顔をしている。
ちらりと高橋の方を見ると唇をかすかに動かした。
その調子。
ゆり子にはそう読めた。高橋は、東城に向かってにこにこと頷いている。
「だから言ったろう、権藤は東城に会いたがってる、って。」
いや、それは言い過ぎだ。
ゆり子は高橋のスネを蹴り返した。
「で、高橋との初デートはどうだったの、さやかちゃん。」
デートの話を東城に振られたとたん、さやかはぱあっと明るい顔になり、饒舌にしゃべり出した。
「もう、最高でした。高橋さんは運転もすっごく上手でスムーズだし…」
いや、それはクルマがいいだけだろ。ベンツなら誰が運転したってスムーズだし。
「男の人と手をつないで歩くのも、何かデートだなあ、って感じだったし…」
ふーん、手をつないだんだ、へぇー。
「おまけにクルーズディナーを予約してくれてたんですよ。」
クルーズディナー!?まさか、コースじゃないだろうな。
そんな無駄使いする余裕があったら、もう一人誰か雇ってよ、社長〜〜。
「クルーズディナー? 良かった?」
東城が聞くと、さやかはディズニーのシンデレラよろしくうっとりとした顔で、ゆっくりと頷いた。