乙女は白馬に乗った王子を待っている
「じゃあ、僕たちも今度行ってみない?」
いきなりきた!
つーか「僕たち」って何だ、「僕たち」って。まだひとくくりにされるような立場ではないんだけど!?
「え? いや……、私、船酔いがひどいタチなので、クルーズはちょっと……」
「大丈夫だよ、ゆりちゃん! 港の中を一回りするだけだから、全然揺れないよ。
タワーマンションとか、観覧車とか橋とか沖の方から見るとすっごく素敵でロマンチックだから、行きなよ。」
テーブルを叩かんばかりの勢いでさやかが力説する。
あの頭と腹で、ロマンチックもクソもあるもんか……とは、さすがのゆり子も言えない。
毒舌が体の外に飛び出さないように必死だった。
「うーん……、やっぱ、クルーズはいいや。」
ゆり子が答えると、東城が質問を重ねた。
「じゃあさ、ゆりちゃんはどんなデートがしたいの?」
「デート?」
そういえば、デートなんて久しくしていない。急に言われても何も思いつかなかった。
「………思いつかない。別に、何でもいいんじゃない。」
「権藤は、ホント、男前だよなー。」
高橋の言い方は、呆れたようでもあり、感心したようでもあった。