乙女は白馬に乗った王子を待っている
駅からマンションまで一人でふらふらと歩いていると、いつものコンビニから出て来た翔太と鉢合わせた。
「ゆり子さーん。」
翔太の落ち着いた声に少しがっかりする。さやかに声をかける時とは微妙にトーンが違う。
「今、帰り?」
「うん。ちょっと飲んでたから。」
「あれ? 急な残業じゃなかったの?」
「え?」
「さっき、さやかちゃんと会ったら、そう言ってたから。」
「あ―—、そう。うん、残業してた。」
翔太は、両手を広げてスキップしながら歩くゆり子をまじまじと見つめた。
「ふ―—ん、こんな時間まで仕事なんて大変だね。」
「そうなんですよォ〜。社長にこき使われてまーす。」
少々呂律が怪しかったが機嫌良く答えた。