乙女は白馬に乗った王子を待っている
「……そうなんだ―—。」
さやかはそれっきり昨晩の話を打ち切った。
「じゃ、私、行くから。さやかは?今日はバイト?」
「うん。昨日の夜、休んじゃったから、今日は昼過ぎからラストまで入る予定。」
「そっかー、じゃ、行ってきます。」
「うん、行ってらっしゃい。」
さやかは朗らかな声でゆり子を送り出した。
「お早うございます。」
ゆり子の明るい声が部屋に響くと、高橋は困ったように少し眉をよせてゆり子をみあげた。
「どうかしたんですか、社長。」
「……これ。」
高橋が見せたのは、さやかからのテキストだった。
それは、残業お疲れ様です。今日は残念でした。今度こういう素敵なお店に行ってみたいです、というメッセージとともに、50件ぐらいのレストラン、バー、カフェのリストがずらっと並んでいた。