乙女は白馬に乗った王子を待っている

「……そうなんだ―—。」

さやかはそれっきり昨晩の話を打ち切った。

「じゃ、私、行くから。さやかは?今日はバイト?」

「うん。昨日の夜、休んじゃったから、今日は昼過ぎからラストまで入る予定。」

「そっかー、じゃ、行ってきます。」

「うん、行ってらっしゃい。」

さやかは朗らかな声でゆり子を送り出した。


「お早うございます。」

ゆり子の明るい声が部屋に響くと、高橋は困ったように少し眉をよせてゆり子をみあげた。

「どうかしたんですか、社長。」

「……これ。」

高橋が見せたのは、さやかからのテキストだった。

それは、残業お疲れ様です。今日は残念でした。今度こういう素敵なお店に行ってみたいです、というメッセージとともに、50件ぐらいのレストラン、バー、カフェのリストがずらっと並んでいた。


< 93 / 212 >

この作品をシェア

pagetop