乙女は白馬に乗った王子を待っている
「すごい……。」
「権藤〜、オレ、どうしたらいい?」
「……私に相談されても困ります。」
「さやかちゃんって、案外グイグイ来るよなあ〜。」
大げさにため息をついてみせているが、口元は緩んでいた。
「イケメン社長は、もててもてて困っちゃいますね。」
「いやあ、ま〜、それほどでも?」
「……結局自慢ですか。」
ゆり子は呆れながら席に着いた。
「え、ちょっとは焼いてくれるかと思ったのに。」
これだよ。甘い顔するとすぐつけあがる。
「ま、自信があるのはいいことですけどね。」
「どこに行こうかな〜。」
案外嬉しそうな声をしていたのが、ゆり子のしゃくに障った。
「にやけてないで、ちゃんと仕事して下さい。」
ほーい、というふざけた返事は機嫌が悪くない証拠だ。
ゆり子口をぎゅっと横に結んでぶすっとした顔になる。考える前に出て来た嫌味がちくりと高橋を刺す。
「……昨日は、二人で会うのは面倒だ、とか言ってませんでした?」
「ま、そうなんだけどさ、こんなテキスト送ってくるなんて、それはそれで、可愛げがあるじゃないの。
権藤はこういうことはしなさそうだけど。」
「黙ってれば言いたい放題ですね。」
話はこれ以上しませんからオーラを放ちまくって、ゆり子は自分の業務に戻った。
なんかムカつく。
その時、社の電話が鳴って、ゆり子は素早く取り上げた。高橋も、それ以上ゆり子に話しかける事なく、業務に戻った。