乙女は白馬に乗った王子を待っている
「今日は翔太、遅いね。来ないのかな?」

グラスが空になってしまうと、ゆり子は翔太のおみやげをあてにして言った。

「うん、今日から実家に帰るんだって。日曜日に帰ってくる、って言ってた。法事か何かみたいよ。」

「あ、そうなんだ?」

仕方なくゆり子は立ち上がって、もう一本(第3の)ビールを取りに行った。

「あれ、まだ飲むの?」

「こんなドラマ見てたんじゃ、もう一本飲まなきゃやってられないでしょ。」

「何、それ。」

「だって、ホラ、婚約者が強引にイケメンに絡んでるのに、有村美香は陰でびちょびちょ泣いてるだけだもん、なんかイライラする〜〜〜!」

二人はテレビに視線を移した。

親友が有村美香を慰めている。『信じて待っていれば、必ず、専務は美香を迎えに来てくれるから。美香が信じなくて、どうするのよ?』
美香の手を取って、優しく慰める。有村美香は潤んだ瞳で、親友を見つめこっくり頷いていた。

「じゃあさ、ゆりちゃんだったらどうする?」

「え?」

「イケメン専務に、婚約者とは手を切って下さい、ってはっきり言う? 言えないよね? 普通。」

「ん―—、そうかなぁ。そもそも、こういう男は好きにならないと思うけど。」

「え!? 何で!? カッコイイし、優しいし、専務だし、最高じゃない、このイケメン専務。さやかだったら、絶対結婚したいなあ〜、こういう人と。」

「あ、今高橋社長のこと考えてたでしょ?」



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