乙女は白馬に乗った王子を待っている
さやかは朗らかに笑って、舌をぺろっと出した。
「わかった〜? 実はね、明日も高橋さんとデートなんだー。
夜景の綺麗な六本木のレストランに連れて行ってくれるんだって。今から楽しみ。」
「……ふーん、良かったねぇ。」
「ねえ、ゆりちゃん、一応、新しい下着を買ったんだけど、明日、着ていったほうがいいかなあ?」
「………」
「実はね、リッツカールトンのホテルじゃないかと思ってるの。この前、お願いしたんだ〜、ここに行ってみたい、って。」
リリリリッツカールトンかよ。
ディナークルーズといい、リッツカールトンといい、飛ばしてるなあ〜〜、高橋社長のヤツ。
「さやか、初めての夜は、絶対素敵なホテルで、って思ってるんだよねー。」
「あれ? アンタ、すでに社長のところに泊まってたじゃん?」
ゆり子が思わず突っ込むと、さやかはきょとんとした。
「あ、あれは、さやかが高橋さんのうちで眠っちゃっただけだよ。」
ゆり子は手にしていたビールを吹き出すところだった。
お、おマエは幼稚園児か!?
「じ、じゃあ、何にもなかったの?」
「当たり前じゃない。やだあ〜、ゆりちゃんてば。」
さやかはゆり子の肩をばんばん叩く。
ゆり子はへなへなと力が抜けた。翔太がこれを聞いたら、喜ぶんじゃないだろうか。
あ、でも、明日はリッツカールトンに泊まるんなら同じことか。っていうか、リッツカールトンだったら余計へこむかな……。
そんなことを考えながら、ゆり子はビールをぐびぐびやっていた。