雨音の周波数
 前田さんは紙袋からいくつかの調味料を取り出した。

 ニッポン香味は中小企業だが安定した経営を行っている。国内産の質のいい調味料を取り扱っていて、スーパーなどで売られている調味料より少し値が張るが、主婦や料理好きの人に人気が高い。

 そうは言っても、なるべく出費を抑えたいのが世の常。買いたいと思っていても買わない人も多いだろう。そういうものが貰えるかもしれないというのは、リスナーの興味を引くはずだ。

 テーブルに置かれている調味料は、粗挽きこしょう、粒こしょう、荒製塩、白醤油、純米酢などだった。

「ここにあるのはネット通販、店舗販売でも人気の商品です。これを詰め合わせセットという形で、と考えています」
「いいですね。私が欲しいくらいですよ。この詰め合わせは何セット用意していただけますか?」

 私は白醤油のビンを手に取りながら前田さんに聞いた。

「十セットまでなら用意できます。まだ必要でしたら社に掛け合います」

 見た目はふんわりした女性なのに、なんと頼もしい人なんだろうと思った。

「それならレーティング期間が四日なんだから、一日二セットをプレゼントでいいんじゃないか」と山岸さんが言った。

 誰もが同じように考えただろう。みんな、頷きながら「いいね」と口々に言った。

「あの、一日三セット、プレゼントにしませんか?」

 前田さんが勢いよく言った。

「それはこちらとしても有り難いですが、でも」と山岸さんが少し言葉を濁した。

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