雨音の周波数
「葉菜さん、素敵なアイディアありがとうございます。ラジオドラマっていいですよね。僕も大好きです。十年くらい前はラジオドラマもそれなりに放送されていましたよね。最近は随分減ってしまって寂しいなと思います。実はこのメールにもあったラジオドラマの脚本を書いた人が、この番組の水曜日と木曜日を担当している放送作家さんなんですよ」

 中島さんはガラス越しに微笑んできた。

 ああ、たぶん中島さんはこのリスナーさんの案に乗り気なんだろう。企画会議で押してくるだろうな。

 来ているメールを見ると、イントロクイズ、誰もが知っている童話や昔話の結末を変えて遊ぶ、簡単なクッキングレシピの紹介、渡すことのない相手にラブレターを書いてみようなどがあった。

 結構、面白いアイディアが来ているな、と思った。これなら一つか二つくらいは、こちらでブラッシュアップすれば企画として問題なく使えるだろう。

 番組が終わり、届いたメールをスタッフ全員で読み返していた。放送終了後でもメールは止まることなく届く。ものによっては明日の放送で紹介したいものもあるため、それをより分ける。

「小野さん、こっちのも確認お願いします」

 夏川さんからプリントアウトされたメールを受け取った。ほとんどがラジオドラマをやってくれという内容だった。

 これだとラジオドラマは決定となりそう。とは言っても、脚本と収録のことを考えると月一企画が妥当な感じだな。

 次のメールを見て目を疑った。また"石井 圭吾"の名前があったからだ。アドレスを確認すると、間違えなくあのクリスマス特番のラジオドラマにメールをくれた"石井 圭吾"だった。

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