雨音の周波数
 企画会議では予想通り月一でラジオドラマの放送が決まった。

 ラジオドラマの原案はリスナー。初恋、旦那さんとの馴れ初め、初めて付き合った人、忘れられない恋、酷い失恋といったような自分が経験した恋話。または妄想恋話。それらをリスナーから募り、その中から一つ私が選び三分程度のラジオドラマにする。

 そして主演はパーソナリティー中島さんだ。そのため女性の目線の恋話でも、男性目線に変更する。

 こうすることでメールをくれたリスナーさんが、あのとき彼はこんなふうに思ってくれていたかもしれない、と思わせるようなものにする予定だ。

 中島さんは自分が演じるとは思っていなかったらしく、少しだけ困ったなという顔をしていた。

 私としては中島さんのイケボを惜しみなく使ってもらおうと思っている。そのためにも核になるセリフが不可欠だ。

 パソコン画面には恥ずかしい言葉が連なっている。それを大事に保存する。私の職業を知らない人が見たら、確実にイタイ女と思われてしまいそうだ。

 諸々の仕事を片付け、今日の仕事は終わった。帰りの車の中では、お見合いについて必死に悩むことになる。


 そしてレーティング期間となり、特別企画と共に番組が進行する。私が書いたラジオドラマの放送日でもあった。

 中島さんは役者ではないが、表現するとう意味ではプロである。私の求めていた温かくて甘い演技をしてくれた。これで中島さんのファンは増えるだろうと予想している。

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