雨音の周波数
 佐久間さんから修正を指示してもらう。その修正が完了次第、番組プロデューサーへプロットをメールで送る。この一連の作業が終わったのは夕方だった。

 明後日の金曜日くらいにはメールの返信が来るだろう。

 窓の外を見ると雨が降っている。月曜日から降り始めた雨は止むことがない。重く厚い雲を眺める。

 この雨が止んだらすぐに秋になって、気がつけば年末になるんだろうな。

 段々と過密になっていくスケジュールを想像すると眩暈がしそうだった。

 金曜日、予想通り、番組プロデューサー長谷川さんからのメールが朝一で来ていた。内容を確認すると、特に変更はしないでこのまま進めて問題ないとのことだった。

 プロットをもとに脚本を完成させ、それを番組プロデューサー、ディレクター、アシスタントディレクターに配り、仕事の割り振りを決める。頭で考えればなんてことない流れだが、それを予定通りに運ばせるのは大変なものだ。

 予定がずれ込まないためにも、脚本を書きますか。

 テキストエディタを起動する。そして甘ったるいラブストーリーの世界へと落ちていった。


 九月にクリスマスソングを聴いていた日々が随分と古い記憶になってしまった十月中旬。今日は配役のオーディション日。舞台役者、新人声優さんが来ていた。オーディションだけで丸一日潰れたが、いい役者さんを充てることができそうだ。

 スタジオの横にある休憩ルームで缶コーヒーを飲んでいると、少し疲れた顔の長谷川さんがやってきた。

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