雨音の周波数
 最後にキャスト、スタッフの名前が読み上げられる。その中にはもちろん私の名前もある。

 終わった。とりあえず、酷い問題はない。リスナーの反応はどうだろう。

 テーブルの上を片付けて、タンブラーに入れていたコーヒーを飲み干した。ドラマが終わって三十分。そろそろリスナーからの反応が出始める頃だろう。座っているのに座っていないような感覚で落ち着かない。

「失礼します」

 アシスタントディレクターの夏川さんが紙の束を持ってやってきた。

 夏川さんも長谷川さんと同じで、ここのラジオ局に勤める人だ。

「小野さん、お疲れ様です。ラジオドラマ、いい反響ですよ。はい、これ」

 彼女は目の前に紙の束を置いてから「プリントアウトしたら、また持ってきますね」と言って、会議室を出て行った。

 一枚目を手に取る。

〈とても良かったです。胸がキュンとしました。今年は友だちと過ごすクリスマスだけど、来年はドラマの中の二人に負けないくらいラブラブなクリスマスを過ごすと決めました〉

 うれしい言葉に安堵して、次のメールを手に取る。

〈主人公の名前が出てこないところがよかったです。勝手に好きな俳優さんを思い浮かべて聴いていました。来年もまたラジオドラマをやってください〉

〈初めてラジオドラマを聞きました。音だけだから、たくさんのことが想像できて楽しかったです〉

〈やっぱり男は肉食男子でしょ。意地っ張りな子や強がりな子をぐいぐい引っ張ってもらわないとね〉

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