あなたを守りたい
「ビールでも飲む?」
「千春さん、家で飲んでるんですか?」
「時々ね。黒沢くんは?」
「僕もたまに」
「そうなんだ」
「飲みに行ったりはしないんですか?」
「うん・・・行きたいのはやまやまなんだけど、遅くなるのがね・・・」
ヤバい。
嫌な事を思い出させてしまう。
「あー、でももし良かったら今度ご一緒しませんか? 僕とだったら家の前まで一緒に帰って来られますし。あ、夜が嫌なら休みの日の昼間でもいい。美味しいものでも食べましょう」
「ありがとう。そうね。あなたがいれば安心だわ」
「どこでもお供しますよ」
千春さんが笑顔になった。
今日の事は早く忘れて欲しい。
千春さんが冷蔵庫から出してくれたビールのプルタブに指を引っ掛ける。
プシュッ。
炭酸の音がした。
「つまみはこれくらいしかないけど」
そう言って出してくれた枝豆とサラミを口に運んだ。
旨い。
「ところで黒沢くん。さっきから私の事、下の名前で呼んでるよね?」
しまった!
いつも心の中では千春さんと呼んでいたので、さっきの事件で気が動転してそのまま言葉に出していた。
どうしよう。
「す、すみません!」
言い訳の言葉が見つからない。
怒られたらどうしよう。
「ほら、頭を上げて。別に嫌じゃないから」
「えっ?」
「いつも金子くんから名前で呼ばれてるでしょ。だから慣れちゃった」
「でも、僕は金子さんのように長い付き合いではないし」
「いいのよ。これから長い付き合いになるでしょ? あなたが辞めない限りは。どう? うちの会社で働けそう?」
「はい。とても楽しいです」
「そう。それは良かった。それじゃ、これからも宜しくね」
「はい。こちらこそ宜しくお願いします」
「ご飯まだでしょ?」
「えっ?」
「残り物しかないけど、あとで温めるわね」
「いいですよ。藤井さんのが足りなくなるでしょ?」
「千春でいいって」
「すみません」
「ご飯、冷凍してるのがたくさんあるの。早く使わなきゃ」
夕べ作ったという肉じゃが。
それからお味噌汁は新たに作ってくれた。
あとは、漬物や納豆などあり合わせのものだったけど、誰かに作ってもらうと何でも美味しい。
「旨いです」
「ごめんね。残り物で」
「いえいえ。うん本当に旨い」
結局僕は、晩御飯までご馳走になってしまった。
誰かと一緒に食事をするのはいいものだ。
その相手が片思い中の千春さんとなるとなおさらだ。
ずっとこうしていたい。
だけど、無情にも時計の針は止まってはくれない。
「千春さん、家で飲んでるんですか?」
「時々ね。黒沢くんは?」
「僕もたまに」
「そうなんだ」
「飲みに行ったりはしないんですか?」
「うん・・・行きたいのはやまやまなんだけど、遅くなるのがね・・・」
ヤバい。
嫌な事を思い出させてしまう。
「あー、でももし良かったら今度ご一緒しませんか? 僕とだったら家の前まで一緒に帰って来られますし。あ、夜が嫌なら休みの日の昼間でもいい。美味しいものでも食べましょう」
「ありがとう。そうね。あなたがいれば安心だわ」
「どこでもお供しますよ」
千春さんが笑顔になった。
今日の事は早く忘れて欲しい。
千春さんが冷蔵庫から出してくれたビールのプルタブに指を引っ掛ける。
プシュッ。
炭酸の音がした。
「つまみはこれくらいしかないけど」
そう言って出してくれた枝豆とサラミを口に運んだ。
旨い。
「ところで黒沢くん。さっきから私の事、下の名前で呼んでるよね?」
しまった!
いつも心の中では千春さんと呼んでいたので、さっきの事件で気が動転してそのまま言葉に出していた。
どうしよう。
「す、すみません!」
言い訳の言葉が見つからない。
怒られたらどうしよう。
「ほら、頭を上げて。別に嫌じゃないから」
「えっ?」
「いつも金子くんから名前で呼ばれてるでしょ。だから慣れちゃった」
「でも、僕は金子さんのように長い付き合いではないし」
「いいのよ。これから長い付き合いになるでしょ? あなたが辞めない限りは。どう? うちの会社で働けそう?」
「はい。とても楽しいです」
「そう。それは良かった。それじゃ、これからも宜しくね」
「はい。こちらこそ宜しくお願いします」
「ご飯まだでしょ?」
「えっ?」
「残り物しかないけど、あとで温めるわね」
「いいですよ。藤井さんのが足りなくなるでしょ?」
「千春でいいって」
「すみません」
「ご飯、冷凍してるのがたくさんあるの。早く使わなきゃ」
夕べ作ったという肉じゃが。
それからお味噌汁は新たに作ってくれた。
あとは、漬物や納豆などあり合わせのものだったけど、誰かに作ってもらうと何でも美味しい。
「旨いです」
「ごめんね。残り物で」
「いえいえ。うん本当に旨い」
結局僕は、晩御飯までご馳走になってしまった。
誰かと一緒に食事をするのはいいものだ。
その相手が片思い中の千春さんとなるとなおさらだ。
ずっとこうしていたい。
だけど、無情にも時計の針は止まってはくれない。