あなたを守りたい
「それじゃそろそろ帰ります」

 えっ?
 立ちかけた僕の腕を彼女が握る。
 彼女を見ると、不安そうな眼差しで僕を見上げていた。

「帰らないで」
「千春さん・・・」
「私をひとりにしないで。怖いの。私怖いの」

 彼女を抱きしめる。
 華奢な体は、強く抱きしめると折れてしまいそうだ。

「だけど、僕も一応男ですよ?」
「黒沢くんの事なら信じられるから」

 確かに彼女に手を出そうとか、何かしようとかいう気持ちは無い。
 それでも僕も男だ。
 好きな彼女と一緒にいたら、このままの理性が保てるかどうか。
 いや。
 たぶん大丈夫。
 傷ついた彼女をどうこうするような非道な人間ではない。
 うーん。
 だけど、このまま寝れる気がしない。
 明日は営業会議があるんだが・・・。
 


 
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