あなたを守りたい
「黒沢くん、大丈夫?」
「藤井さん、どうしてここに?」
「金子くんから頼まれたのよ。商品探すの手伝ってくれって」
「すみません。どう探していいのか要領がわからなくて」
「わからなくて当たり前よ。金子くんも、最初の何回か付いて来てあげればいいのにね」
「いえ・・・・」

 これは金子さんの好意だ。
 きっと藤井さんと近づくチャンスを作ってくれたんだ。

「どの商品を持って行くの?」

 彼女が僕が持っているメモを覗き込む。
 至近距離に彼女の顔がある。
 このままこっちを向かれたら心臓が飛び出してしまいそうだ。

「あっ、これね」

 そう言うと、彼女はそのまま振り向く事も無く通路の奥に歩いて行った。
 良かった。
 いや、ちょっと残念だったかも。
 
「黒沢くんこっちこっち」

 手招きする彼女に我に返る。

「す、すみません」

 それから彼女は、丁寧に見つけ方を教えてくれながら、全ての商品を揃えた。

「わかった?」
「はい。ありがとうございました」
「すぐに慣れるわ。それじゃ、私はこれで」
「ありがとうございました。金子さんにあと5分したら降りて来て下さいって伝えてもらえますか?」
「わかった」

 彼女が見えなくなると、僕は商品を抱えて駐車場に向かった。

「お待たせ」

 それから金子さんが降りて来たのは10分ほど経ってからだった。
 僕は運転席にスタンバイ。

「お前、運転する?」
「はい。まだ死にたくありませんから」

 ここは、大あくびをしていた金子さんに運転させるわけにはいかない。
 
「そんじゃ、ちょっと寝させてもらうわ」
「あ、ちょっと。行き先教えて下さい」
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