婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「ごめん 登録もしてないし、仕事用の携帯があることもすっかり忘れてた…」
「そっか… それじゃ仕方ないよな…」
圭司は小さくため息をついた。
きっと、呆れてそれ以上何も言う気になれないのだろう…
私だって自分が情けない
あまりに次元が低すぎて…
「ごめんね 余計なことしちゃって… 携帯もちゃんと登録しとくね じゃあ 私、帰るから…」
私は圭司の携帯を机に置いて、勇斗を再び抱っこ紐の中に入れた。
「あ なつ… 車で送ってくよ 勇斗もいるし大変だろ?」
私のシュンとした様子が気になったのか、圭司が慌ててそう言った。
「ううん 大丈夫だよ 圭司だって仕事中じゃない…」
「いいよ 何とかなるから… 今 キー持ってくるから、ちょっとここで待ってて…」
そう言って、圭司は行ってしまった。
さすがにそんなことさせられないよ…
仕事の足を引っ張りにきた訳じゃない…
ただ私は、圭司の役に立ちたかっただけなのだ。
北川さんのように…
こみ上げてきた涙をグッとこらえて、圭司の携帯にLINEを送った。
『やっぱり、電車で帰ります』
そして、勇斗を抱き上げ、私は駅へと歩き出した。
-・-・-
それから、二週間が過ぎた。
圭司の仕事も本格的に忙しくなり、帰りも深夜になることが多くなった。
私も勇斗の育児に負われながら、必死で毎日を過ごしていた。
「ねえ 勇斗くんママ、何かあった? 最近元気ないよね 良かったら、私 話聞くよ?」
いつもの公園のベンチで、美咲ちゃんママが心配そうに尋ねてきた。
「あ~ うん… 実は…ね」
私は先日のことを、全て美咲ちゃんママに打ち明けた。
「要するに、勇斗くんママはその北川さんっていう人に旦那さんを取られちゃうんじゃないかと心配な訳だ…」
「あ いや そこまで大袈裟じゃないんだけど、ただ噂の通り、圭司も北川さんにまんざらでもないのかなって、ちょっと思っちゃったりして… だって、ほんとに彼女魅力的だったんだもん それに、私は今、お洒落ひとつできていないし、圭司だって私のことを女として見てくれてないし…」
私は俯きながら、小さな声でそう言った。
「もしかして、勇斗くんママのとこってセックスレス?」
美咲ちゃんママのストレートな表現に狼狽えながらも、私はコクリと頷いた。