婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「少し前まではね、全然気にしてなかったの… 夜はエッチなんてなくたって、キスだけでも十分愛を感じてたし… 圭司が私を抱かないのも、育児で精一杯の私の体を気づかってくれてるんだって…」
私の言葉に、美咲ちゃんママは真剣な顔で頷いた。
「でも、北川さんと会った日に思ったの… 圭司が私を抱かないのは、私にはもう、女としての魅力を感じなくなったからなんじゃないかって… ただでさえ、子供ができると妻を女としてみれなくなるとかいうでしょ… 毎日あんな綺麗な人を見てるんだもん こんな鈍くさくて色気のない私じゃ、そう思われたって不思議じゃないし… それに、最近ベッドでも背中を向けられちゃうんだよね、キスだって気づいたら全然されてない… 確かに圭司も忙しくなったけど、これって、それだけが理由じゃないと思うの きっと、圭司は北川さんのことを…」
自分の言葉に傷ついて、言葉が詰まってしまった。
「勇斗くんママ…」
美咲ちゃんママは私の涙に気がついて、背中を擦ってくれた。
「ねえ 勇斗くんママ… 今夜さ、自分から旦那さんを誘ってみたら? それでもダメなら、どうして抱いてくれないのって、はっきり本人に聞いてみなよ。こんなとこで泣いてたって何も解決にはならないし… 恐いかもしれないけど、ちゃんと旦那さんと向き合わないと…」
「うん そうだよね…」
そして、私はその夜、ベッドの中で圭司の帰りを待っていた。
深夜1時半…
ガチャとドアの開く音がして、圭司が寝室へと入ってきた。
「おかえり 圭司…」
「あ ごめん 起こしちゃた?」
圭司はネクタイを緩めながら、小さく呟いた。
「ううん 待ってたんだ 今日は随分遅かったね…」
「ああ この土日はさすがに休もうと思ってさ… 今日は死ぬほどやって来たんだよ… 明日はどこへでもなつにつき合うよ…」
圭司は笑いながらそう言った。
「ねえ 圭司…」
「ん?」
「明日、休みなら… 今日、する?」
「えっ?」
びっくりしたように圭司が顔を上げた。
「あ えっと ほら、ずっと圭司にも我慢させちゃってたし… その そろそろ圭司だって…あれかな~って」
素直に抱いてと言い出す勇気もなく、これが精一杯だった。
「あー うん ありがとな…。でも、なつはそんなこと気にしなくって大丈夫だから… ゆっくり休みなよ」
圭司は私の頭を撫でて優しく笑うと、そのままシャワーを浴びに部屋を出ていってしまった。