婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
翌朝、目を覚ますと、私は圭司の胸の中にいた。
こうして圭司の温もりに包まれて朝を迎えたのは、どれくらいぶりのことだろう。
昨夜は、どんなに激しくされるのかと覚悟したけれど、圭司は驚くほど優しく丁寧に私を抱いてくれた。
随分長い期間、お預け状態にしてしまったにもかかわらず、それでもやっぱり、私の体を気づかってくれる圭司をすごく愛おしいと感じた。
ごめんね 圭司
気持ちを疑ったりなんかして…
私は圭司の寝顔にキスをしようと、ゆっくりと顔を近づけた。
唇を重ねようとしたその瞬間、ふと、女子社員達の噂話が頭をよぎった。
『瀬崎さんは奥さん一筋だから、いくら北川さんでも無理でしょ』
『いや 案外そうでもないかもよ だって、この前、瀬崎さん…』
そうだ
まだ、これだけは謎のままだったんだ…
一体この続きは、何だったのだろう…
ゆずちゃんなら、分かるかな…
いやいやいや そんな事をしたら、圭司のことをまだ疑っているみたいじゃない…
ちゃんと圭司は私のことを愛してくれているというのに、そんなの圭司にだって失礼だよね…
もう、余計な詮索はやめておこう
圭司が私を裏切るなんて、ある筈がないんだから…
そんなことを圭司の顔の上で考えていると、圭司の目がぱっと開いた。
「あ…」
「俺 ずっと、キスしてもらうの待ってるんだけど、ちょっと待たせすぎじゃない? これって、お預けされてんの?」
圭司はそう言ってクスっと笑うと、もう待たないよと私に唇を押し当てた。
「んっ …ん」
後頭部を押さえられ、圭司の舌が深い角度で入ってくる。
朝から濃厚なキス受け、もう何も考えられなくなっていた。
「ねえ 圭司…」
「ん?」
「愛してる」
圭司は私の言葉にふっと微笑むと、私を下に組み敷いて耳元で囁いた。
「俺だって、死ぬほど愛してるよ…」
「あっ」
圭司の吐息が耳にかかって、ゾクッと鳥肌が立った。
「なつ 凄い濡れてる… してもいい?」
下着の中に手を入れながら、圭司がそう言った。
私が黙って頷くと、圭司は首筋に舌を這わせた。
「ああっ あっ」
圭司の背中に手を回し、だんだんと激しくなっていく愛撫に夢中になっていると、ベビーベッドから勇斗の泣き声が聞こえてきた。
「ふえーん ふえーん」
「……。」
「……。」
そこで私達は、一瞬にして甘い世界から引き戻された。
「あー 勇斗 ごめんね~ ミルク飲もうね~」
私は急いで勇斗を抱き上げた。
「圭司 私、ミルク作ってくるから、ちょっと勇斗のこと抱っこしてて…」
「ああ 分かった… はい おいで 勇斗」
圭司は私から勇斗を抱き上げ、すぐにあやし始めたのだけれど…
「勇斗~ おまえ、今度からもう少し空気読めよな~ 途中でやめるの、結構辛いんだぞ~ ん? 分かったか~?」
何だか、あやすと言うよりこれは…
「もう、圭司は勇斗に何言ってるのよ~ 真面目にあやしてってば~」
本気で勇斗にグチり出す圭司に思わず笑いながら、私はキッチンへと急いだ。