婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
朝食を済ませた後、私達は近所のショッピングモールへとやって来た。
「今日は勇斗の服を見に来たんだっけ?」
「うん えっと、まずは、このお店かな」
私は、案内板の中にお気に入りのショプを見つけ指さした。
「じゃあ エレベーターか」
「うん。」
ヘビーカーを押す圭司の腕に再び手をかけながら、お店へと歩き出した。
このショッピングモールへは、車で20分…
久しぶりの休日くらい家で休ませてあげたかったのだけれど、この休みを逃すと土日を休めるのは少し先だと言われ圭司の言葉に甘えて連れて来てもらったのだ。
私の服ならいくらでも我慢できるけれど、勇斗となるとやっぱりそうもいかなくて…
お店に入り、あれこれ迷っているうちに、案の定、勇斗がぐずり出した。
「あー 勇斗 ごめんね~ 飽きちゃったよね~」
ベビーカーの中を覗き込むと、勇斗が顔をくしゃくしゃにさせていた。
これはもう、買い物どころではないか
まだ、何も買えてないけど仕方ない…
「いいよ なつ 俺、勇斗のこと見てるから、なつは買い物してなよ」
圭司が勇斗を抱き上げながらそう言った。
「いいの? ありがとう 助かる じゃあ 勇斗のことお願いね。」
やっぱり、こういう時に圭司がいてくれると心強いな…
勇斗の泣き声が聞こえなくなったところで、私は服選びに没頭した。
勇斗の買い物を終えて、私は圭司と合流した。
「あっ 勇斗、寝ちゃったの?」
「うん ちょっと外に連れ出したら、いつの間にか寝てたよ…」
「そっか じゃあ さっきは眠かったのかな…」
私はクスっと笑いながら、勇斗の寝顔を見つめた。
「どうする? なつは自分の服とか見なくていいの? ここに着いた時、一階にあった店の服、欲しそうに見てなかった?」
あっ 気づかれてたんだ…
凄く可愛いくてお洒落なワンピースが飾ってあって、つい見とれてしまったけれど…
「あー うん あれは、いいの… あんなお洒落な服買っても暫くは着てくとこないし… それに、勇斗と一緒じゃミルクとかヨダレで、どうせシミになっちゃうから…」
そう、今の私には勿体ない…
お値段も結構なものだったし…
あーいう服は、きっと北川さんがお似合いだな…
ふと、頭の中にあのワンピースを着た北川さんとその横で微笑む圭司の姿が浮かんできた。
やだ 私…
やっぱり、まだ、二人のこと気にしてる?
私はプルプルと想像ごとかき消した。
「なつ?」
はっと圭司の方を向くと、ちょっと心配そうな顔で私を見ていた。
「あっ うん とにかく、いいの… そろそろ、勇斗も起きちゃうし… そうだ もうお昼だよね? どこか食べに行こうよ」
私はそう言って、ベビーカーに手をかけた。
やって来たのは、ファミリー層に人気のフードコート…。
落ち着いた専門店街のお店も覗いたけれど、やっぱり勇斗のことを考えると、ガヤガヤしたこういう所の方が気が楽なのだ…。
どのテーブルも子供連ればかりだから、いつ勇斗が泣き出しても多少なら許してもらえるだろう…