婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「あー っていうより、今週から圭司があんまり家に帰れなくなるらしくて それを心配してかけてきたみたい…」
「へー 旦那さん、そんなに忙しくなるの? 家に帰れないって、もしかして会社に泊まるってこと?」
「うーん なんか同じチームの人が会社のすぐそばに住んでるらしくて、仮眠とかシャワーは、その人の家に行かせてもらうって言ってたけど…」
これは私も、昨日、圭司から聞かされたばかりだ。
「ねえ それって、勿論男の人の家だよね?」
「えっ あ うん 男の人だと思う…けど」
美咲ちゃんママの真剣な表情に、少し驚いていると…
「あー ごめんね、別に脅かすつもりはないんだけど、泊まりってなると、少し気をつけた方がいいのかなって思ったりして… まあ 旦那さんなら大丈夫だとは思うけどね…」
「うん ありがとう でも、大丈夫だと思う」
私は笑ってそう答えた。
そして、その日の夜から、早速、圭司は泊まってくるようになった。
土曜日の夕方になって、ようやく帰っては来たけれど、夕食を食べて死んだように眠ったあと、日曜日の朝早く、一週間分の着替えを持って会社へと出かけて行った。
『なつ ごめんな…』
夜中に一度、圭司が私の耳元で言っていた気がする。
私も流石に、こんなに圭司が帰れなくなるものとは思わなかった。
ただただ、圭司の体が心配だった。
それから、更に二週間が経って、ようやく圭司の新ブランド立ち上げの仕事も無事に終わりを迎えた。
圭司達のプロジェクトチームは解散となり、子会社化した会社の社員にそのまま引き継ぐことになったようだ。
そして、今日は久しぶりに圭司が帰ってくる。
軽くチームの人達と打ち上げを兼ねて飲んでくるとは言っていたけど、朝から私は待ち遠しくて仕方ない。
勇斗をお昼寝させながら、夕食の準備に取りかかっていると、ゆずちゃんから電話がかかってきた。
ゆずちゃんは半年前に育児休暇を終え、もうすぐ2歳になる連くんを保育所に預けながら仕事をしている。
圭司とは違う部署のようだけれど、こうしてたまに電話をくれては、会社での圭司の様子を話してくれる。
『もしもし なつさん 今、大丈夫ですか?』
いつになく、ゆずちゃんの強張った声にドキリとした。
『大丈夫だよ 何かあった?』
これは、何となく嫌な知らせ…
そんな気がした。