婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
『あの… 実は、瀬崎さんのことなんですけど…』
ゆずちゃんが、言いにくそうに切り出した。
『うん 圭司がどうかしたの?』
私がそう尋ねた後、ゆずちゃんは一呼吸置いて言った。
『浮気…してるかもしれません 同じプロジェクトチームの北川さんっていう人と…』
『えっ…』
ゆずちゃんの言葉に、一気に胸がざわついた。
『実は、随分前から、瀬崎さんと北川さんの二人は噂になっていたんです。瀬崎さんが食事に誘ってたとか、二人でコソコソ話してたとかそんな内容でしたけど… でも、そんなの、ただの噂だと思って、なつさんには言わないでおいたんです。だけど、昨日…』
『昨日… 何?』
押し黙るゆずちゃんに、私は震える声で聞き返した
『はい… 昨日、瀬崎さんと北川さんが給湯室で話してるのを、私、立ち聞きしてしまって… その会話を聞いたら、やっぱり、瀬崎さん…浮気してるかもって…』
『それって、どんな内容だったの?』
私の心臓はバクバクと凄い音を立て始めた。
『言ってもいいですか…?』
『うん… 教えてくれる?』
覚悟を決めてそう答えた。
『瀬崎さんが「最近、ずっと俺が泊まっちゃっててごめんな」って言ったんです。そしたら、北川さんが「そんなの気にしないで下さい」って… それから、「予約したディナークルーズの方は奥さんにバレてないんですか」って瀬崎さんに聞いてました… これって、やっぱり二人は…』
『そっか うん ありがとう 教えてくれて…』
私はゆずちゃんの言葉を遮るようにそう言った。
そして、動揺している自分を隠すように、少しだけ笑った。
『あの なつさん 私の名前出しても構わないので、この話、ちゃんと瀬崎さんに聞いてみて下さい 絶対、このままにしちゃダメですよ』
『うん そうだね ちゃんと圭司に確かめてみるよ ありがとね ゆずちゃん…』
電話を切った後、私は暫くの間、放心状態だった。
きっと何かの誤解だと自分に言い聞かせてみたけれど、どうしても圭司への不信感を振り払うことができない…
もし、圭司が北川さんと浮気しているのが事実だったら…
そう考えただけで、恐ろしくて、どうにかなりそうで…
このまま、この現実から逃げてしまいたくなる。
でも、ダメだ…
ちゃんと、圭司に聞かなきゃダメだ!
圭司が帰ってきたら、確かめなければ…
勇斗の寝顔を見つめながら、私はそう覚悟を決めた。