婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「勇斗くんママったら、パパにそんなこと言ったの~ もう お風呂入れてもらえなくなっちゃうよ~」
ケラケラと笑うのは、最近ママ友になった美咲ちゃんママだ…。
美咲ちゃんママとは予防接種の時に仲良くなって、こうして天気のいい日には、一緒に公園に出かけるようになった。
美咲ちゃんと勇斗は同じ月齢で、美咲ちゃんの上には、もう一人幼稚園になるお兄ちゃんがいる。
だから、先輩ママとして、色々なことを私に教えてくれるのだ。
「いや 口が滑ったというか…なんというか…ね」
「勇斗くんママってば、ホント天然だよね~ まあ そういうところが旦那さんも可愛いいんだろうけどね… あっ ねえねえ 勇斗くんパパの顔見てみたいな~ 写真とかある?」
「あ うん あるよ ちょっと待ってね。」
私はバックの中から携帯を取り出して、圭司が映っている写真を見せた。
「うわ~ 勇斗くんにそっくり! てか、勇斗くんがパパに似てるのか… ふーん なるほどね~ こりゃ勇斗くんがイケメンな訳だわ~」
感心したようにため息をもらす美咲ちゃんママ
「そんなことないよ… あっ 美咲ちゃんパパの写真も見てみたいな~」
私がそう言うと、美咲ちゃんママはえっと言って苦笑いした。
「うーん こんなイケメンパパの後じゃ、うちのが哀れではあるけど… まあ いっか~」
美咲ちゃんママは陽気に笑うと、携帯の写真を私の目の前に差し出した。
「ありがと~」
私が写真に視線を落とした瞬間、美咲ちゃんママが呟いた。
「ゴリラでしょ?」
あ 確かに…
でも、正直に頷くなんて、そんな失礼なことできるはずもなく、何か代わりの言葉はないかと必死で考えた。
「ううん お猿さんみたいで、素敵だよ…」
一瞬の沈黙の後…
美咲ちゃんママがぷっと吹き出した。
「そんな褒め言葉、初めて聞いたよ… もー せっかくお世辞言ってくれるなら、そこは動物離れなきゃ~」
「あ そうだよね なんか ごめん!」
慌てて謝る私に、美咲ちゃんママは可笑しそうに笑い涙を指で拭っていた。
「でもね、この人、こんなゴリラ顔のくせして、一度浮気したんだよね…」
携帯をしまいながら、美咲ちゃんママがポツリともらした。
「えっ?」
美咲ちゃんママは続けた。
「上の子が1歳くらいの時かな… キャバクラのおねーちゃんに誘惑されて浮気したの… まあ 心の浮気じゃなかったから、結局許しちゃったんだけどね… 妊娠中とか育児中って、浮気されやすいとはいうけど、まさか自分が浮気されるとは思いもしなかったよ… だって、この人、私のこと凄い好きだし、結婚してくれなかったら死ぬとかまで言ってた人なんだよ… いくら、当時エッチ我慢させてたからってさ… だからね、今も私に頭が上がらないの… このゴリラ」
フンと笑い飛ばすように美咲ちゃんママは言った。
「そうだったんだ… それは辛かったね…」
なんだか、もの凄くショックを受けた。
美咲ちゃんママは明るく話してくれたけど、育児中に夫に浮気されるだなんて、どれだけ傷ついたことだろう。
私だったら、許してあげることなんてできるのかな…