婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~

そっか…
圭司は私のこと、騙してたんだ…

私は圭司の体を心配しながら、勇斗とこの家で待っていたのに…

ずっと、その間、北川さんのところにいたんだね…

私に内緒でディナークルーズ?

勇斗を連れた私じゃ絶対行けないような所で、自分は着飾った北川さんとデートするつもりだったの?

それはないよ 圭司
バカにするにも程がある…

沸々と圭司への怒りがこみ上げてきた。


私はタクシーを呼んで、荷物をまとめた。

そして、寝ている勇斗をそっと抱っこひもに入れて、玄関へと向かった。

「なつ! こんな時間にどこ行くんだよ!?」

ちょうどシャワーを終えた圭司が、慌てた様子で私を追いかけてきた。

圭司はまだボクサーパンツ一枚にバスタオルを肩にかけた格好で、髪からはポタポタと雫がおちていた。

「勇斗連れて出てくから… 暫く圭司の顔も見たくない」

「ちょっと待てよ 状況が全く掴めないんだけど… なんか俺、なつを怒らせるような事したか?」

圭司は私の腕を掴みながら、必死に尋ねてきた。

「惚けないでよ! 私のこと裏切ってたくせに…」

「裏切るって… 一体何の事だよ?」

「もう いい タクシー待たせてるから離して!」

私は圭司の手を強く振り払った。

「おい ちょっと待てって とりあえず、リビングで話そう な? なつ」

「やめて 離して!!」

私は肩を掴んできた圭司の手を振り解き、圭司の顔を思い切り引っぱたいた。

『パチーン』と大きな音のあと、圭司がイテッと頬を押さえた。

その一瞬の隙をついて、私は玄関を飛び出して、エレベーターへと飛び乗った。

そして、待たせてあったタクシーに乗って、私は実家へと向かった。

携帯には何度も圭司からの着信があったけれど、一切無視して電源も落とした。


暫くして、タクシーは東京にある実家の家の前に到着した。

持っていた鍵でそっと玄関を開けると、すでに知らせを聞いていたのか、父が待ち構えていたように立っていた。

「なつ!」
 
「あ お父様 ごめんなさい こんな時間に…」

「圭司くんから、連絡をもらったよ とりあえず、こっちに来なさい」

「はい…」

勇斗を隣の和室に寝かせ、私はリビングのソファーに腰掛けた。

「なつ 圭司さんに心配かけちゃダメじゃない! こんな夜中に勇斗を連れて出てくるなんて…」

「母さんの言うとおりだぞ いくら、圭司くんがずっと帰って来れなかったからって、へそ曲げて出てくるなんて」

向かいに座った父と母が、呆れたように私に言った。

「私が出てきたのは、そんな理由じゃない…」

俯く私に母がため息を漏らした。

「じゃあ 一体圭司さんの何が不満なの? こんなに大事にしてもらってて…」

「浮気してるんだもの… 圭司、会社の女の人と浮気してるの!」

「何言ってるのよ~ そんな訳ないでしょ!」

「そうだよ なつ 圭司くんに失礼だぞ」



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