婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
父も母も、完全に圭司の味方のようだ。
「だって、本当なんだもの… 圭司、ずっと女の人の所に泊まってたみたいだし それに、明日なんて、私に内緒でその人とディナークルーズにだって行くのよ!」
「もう 圭司さんが浮気する訳ないじゃない ディナークルーズだって、あなたを連れて行くんだから…」
「へ?」
母の言葉に、私はキョトンと首を傾げた。
「おい 母さん! それ言っちゃ、せっかくの圭司くんの計画が台無しじゃないか…」
「今、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ なつがこんな事になってるんだから…」
二人の会話の意味が分からずに、ひとり眉をひそめていると、母が私の目の前にブランドの紙袋と箱を差し出してきた。
「これはね、圭司さんが明日のディナークルーズの為に用意したなつへのプレゼントよ 本当は、明日勇斗を預けに来た時に圭司さんから渡すはずだったんだけど… とにかく開けてみなさい」
母に言われて中を見ると、前に私が見とれていたワンピースとそれに合わせたミュールが入っていた。
「えっ これ… 圭司が私の為に? じゃあ 本当にディナークルーズは私と…」
「そうよ 圭司さんね 誕生日ぐらいは、なつにお洒落させて、美味しいものを食べさせてあげたいって、ずっと前からサプライズで計画してくれてたのよ」
「誕生日?」
「そうよ 明日はなつの誕生日じゃない 忘れてたの?」
「あ… そっか、すっかり忘れてた…」
じゃあ、北川さんが言っていた『奥さんにはバレてないんですか?』や、圭司が言っていった『明日のことは気づかれてないよ』は、そういう意味だったのか…
なんだ…
浮気じゃなかったんだ…
いや、でも
『俺がずっと泊まっててごめんな』は、まだ解決していない…
それに、北川さんのことをみさきって呼んでて、そのみさきさんの家の寝室に携帯だって忘れてきたんだから…
どう考えても、圭司は北川さんの家に泊まってきてる。
それでも、浮気じゃないなんて言えるだろうか…
手にしたワンピースを見つめながら深く考えこんでいると、玄関でチャイムが鳴った。
『ピンポーン』
「あっ 圭司さん 来たわ!」
母がそう言って、立ち上がった。