婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「えっ 三崎俊介…」
みさきって名字だったの!?
そして、男の人…
目を丸くする私に、圭司はもう一枚の写真を見せた。
今度は、ベッドで眠っている男性に北川さんがキスをしてる写真だ。
美しい北川さんと熊男のような大柄な男性とのキスシーンは、まさに美女と野獣のようで…
「この男の人がみさきさんってこと?」
「そう、その北川にキスされてる奴が三崎俊介… 俺のプロジェクトチームの後輩で北川の恋人だよ… 俺が泊まってたのはそいつんち… 俺がさっき電話してた相手も、そいつだったんだけど、なつが俺の携帯にかけてる間に、三崎がシャワーに入っちゃったみたいで、たまたま泊まりに来てた北川が出ちゃったんだよ…」
「そっか そう言う事だったんだ… てっきり、みさきさんって、美咲さんっていう女性の名前だと思ってたから」
「あ それと、給湯室で北川に言った言葉は、ずっと俺が三崎んちに泊まってて、北川が泊まりにこれなくてごめんっていう意味だったんだけど、まあ 杉本も見事に勘違いしてくれたみたいだよな…」
圭司はふーとため息を漏らしながら笑った。
「ごめんね 圭司… 圭司は浮気なんてしてなかったんだね 圭司が北川さんを食事に誘っていたとか、コソコソ二人きりで話してたとか、そういう噂も全部でたらめだったんだ…」
「えっ あー それは、ホント… 北川を食事に誘ったし、コソコソもしてたから…」
「は? 何よ やっぱり、北川さんにちょっかい出してたんじゃない!」
もう 最後の最後でそんな事言うなんて!
再びプンと顔を背けた私を見て、圭司が慌てて口を開いた。
「あー いや そうじゃなくて 北川を食事に誘ったのは、うちのプロジェクトチームに入ってもらう為だよ。あいつの仕事ぶりを見て、前から目をつけてたから… 今回の立ち上げの仕事はさ、普通なら1年はかかるんだけど、俺は三カ月で終わらそうと思ってたからさ… それには、どうしても彼女の協力が必要だったんだよ」
「そっか… そういう事…」
「でも、最初、断られちゃってさ…」
「えっ?」
圭司は思い出したように軽く笑った。
「北川にさ、『そこまでして、瀬崎さんの出世の為に私が尽くす義理も義務もありませんから…』って言われちゃったんだよな… だから、俺も正直にこっちの事情を打ち明けて、ようやくオッケー貰ったんだけど…」
「事情って…?」
「そんなの、なつと勇斗のことに決まってるだろ 俺は一日も早く二人のそばに戻りたかったんだから… だから、北川に言ったんだよ。俺は出世なんて一切興味ないし、どうでもいい… 俺はただ、育児の負担をかけてる妻の為に、一刻も早くこの仕事を終わらせたいだけだって…」
「圭司…」
圭司の言葉に胸が熱くなって、じわりと涙が滲んできた。