婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「ねえ 圭司 なんか怒ってるの?」
私の言葉に、スタスタと駐車場を歩いていた圭司の足がピタリと止まった。
「そりゃ 怒るだろ あんなに馴れ馴れしくなつの髪に触られたら…」
「でも、佐久間さんは美容師さんだよ? 髪に触らなきゃ、仕事にならないし…」
「分かってるよ だから、俺だって我慢してただろ? 二時間の間ずっとさ… だけど、さっきのは余計だろ ちょっとあの人、無神経じゃない?」
圭司は不機嫌オーラ全開だ。
でも…
そっか
圭司はお店にいた時から、ずっとヤキモチ妬いてたのか…
あー だから、あの時、佐久間さん、『心配なんていらなそうだね』って…
あの言葉は、そういう意味だったのか…
「何が可笑しいの…?」
思わず口元が緩んだ私を、ジロリと圭司が睨んでいた。
「いや だって、まさか美容院来て、ヤキモチ妬かれるなんて思ってもみなかったから も~う、美容師さんにまで嫉妬して怒るなんて… 圭司って、ホントに」
私のことを愛してくれてるんだね
そう言おうと思ってたのに…
「悪かったね 心の狭いヤキモチ男で…」
圭司はムッとした声でそう呟くと、さっさと車に乗り込んでしまった。
えっ…
別にそんなこと言ってないのに…
はーとため息を漏らしながら、私も助手席のドアを開けた。
「ホントは、なつにもちょっとムカついてんだよね…」
車を発進させながら、圭司がボソリと言った。
「私? なんで…?」
「俺の前で、楽しそうにしてたから…」
「えー」
なんか、子供のヤキモチみたいになってきた…
こうなってくると、ちょっと面倒くさそうだ。
「だいだいさ、なつはあいつのことバカみたいにおだてすぎなんだよ 上手いのなんて当たり前だろ? あれで飯くってんだから それに、店の外で、簡単に男に髪触らせるとか そういうなつの無防備なとこ、見てて不愉快」
何だか、すごい言われようだ…
ヤキモチ妬いてもらって嬉しかった気持が、一気に沈んでいった。
ん?
でも、これって、なんか…
忘れかけていた記憶が蘇る
「それは、圭司に言われたくないよ… 圭司だって同じようなことしたんだから…」
「はっ? いつだよ…」
目を丸くさせながら、圭司は私を見た。