婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~

「私が、圭司の会社に忘れものを届けに行った時だよ 圭司、私がトイレに行っている間、北川さんのことベタ褒めしてたじゃない 仕事早いなとか気が利くよなとか言っておだててるの私聞いてたんだから… それに、あの時、圭司は北川さんの髪…結ぼうとしてたよね?」

「あ- あれは…」

「私だって、あれ、すっごく不愉快だった!」

私は仕返しとばかりに、運転席の圭司を思い切り睨んだ。

「いや 違うんだよ あれはさ、北川も俺もお互いを全く意識してなかったからで… 深い意味なんて何も」

「だったら、私と佐久間さんだってそうだよね?」

すかさず私がそう返すと、圭司は観念したようにふーと息を吐き出して笑った。

「そうだな 俺が大人気なかったな 悪かったよ なつ ごめんな」

圭司は左手を伸ばし、優しく私の頭を撫でた。

「もーう 今日は私の誕生日なんだからね~ こんなくだらない喧嘩なんてしてる場合じゃないんだから~」

ぷくっと膨れる私に、圭司がプッと吹き出した。

「なーに?」

「いや… その誕生日忘れて、喧嘩ふっかけてきた張本人がよく言うな~と思って… あー うそうそ あっ そうだ なつ お腹空いただろ? サンドイッチの美味しいお店連れて行ってあげるから もう機嫌なおせ な?」

「も~う 私なら大抵は食べもので誤魔化せると思ってるんでしょ~ …で? そのお店には、フルーツサンドはあるの? テラスとかある?」

何だかんだ言いながらも、結局、食いついてしまう私…
圭司はそんな私を見て、満足気に笑っていた。


その後、横浜周辺をドライブしたりしているうちに、あっという間にディナークルーズの時間となった。

「うわ~ 随分、豪華な船だね~」

まるでタイタニック号を思わせるような大きな客船を目の前にして、私は思わず声を上げた。

「この船、フランスの会社の船らしいけど、日本に滞在する1週間だけ、特別にディナークルーズの客乗せて一回りするらしいよ… 滅多にないよな こんなでかい船で…」

「へー そうなんだ それじゃ~ やっぱり、私許せなかったな~ もし、圭司が他の人連れてこの船に乗りにきてたりなんかしたら…」

「だからさ…なつ それは、始めからなつの妄想だっただろ? もういい加減、それ忘れよーな ほら おいで」

圭司は子供をなだめ聞かすような口調でそう言うと、私の手を取り船の中へと歩き出した。
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