婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「料理美味しかったな~ ありがとね~ 圭司」
「なつが喜んでくれたなら嬉しいよ」
「うん ホント幸せ~」
私は圭司の肩にもたれかかりながら、デッキからの夜景をぼんやりと眺めていた。
アルコールで体が火照っているせいか、夜風が当たって気持いい…
ふと、まわりを見渡せば、あちこちの椅子で恋人たちがキスをしていた。
「うわ~ みんなイチャイチャだね」
私の言葉に、圭司が顔を近づけた。
「じゃあ、俺達もしとこっか…」
圭司はそう言って、私にゆっくりと唇を重ねた。
「も~ 圭司はチュー好きだね~ これじゃ、北川さんと来てたら大変だ~ この浮気もの~」
私はフフフと笑いながら、圭司の脇腹をグリグリと肘でついた。
「なつ… かなり酔ってんだろ? もともと弱いのに、調子に乗ってワイン二杯も飲むからだよ 大丈夫か?」
「大丈夫だよ~ ちょっとフワフワしてるだけ… それより、勇斗はどうしてるのかな ホントはずっと気になってたんだけど、圭司に悪いと思って我慢してたの 勇斗、可哀想だよね~ ひとり置いてけぼりにしちゃって… それに、パパとママだけこんな贅沢な料理食べちゃって 勇斗拗ねちゃうよね~ あの子にはグチャグチャしたご飯食べさせちゃって~ どうしよう 勇斗寂しがって泣いてるかも」
何だか急に悲しくなって、ジワジワと涙がこみ上げてきた。
「なつ 勇斗は大丈夫だよ これ見てごらん」
圭司は涙ぐむ私に、携帯の写真を見せてきた。
「あっ 勇斗~」
そこには、今日一日の勇斗の様子が映っていて、どの写真の勇斗も楽しそうに笑っていた。
「さっき、お母さんが送ってくれたんだよ」
「勇斗、グチャグチャしたご飯美味しそうに食べてるね」
「そうだな あいつはそれしか食えないしな…」
「今は、どうしてるのかな…」
「もう、寝てるらしいよ…」
「そっかあ 良かった~ 早く勇斗の顔見たいなぁ」
と… そこから先の記憶があまりなく…
目を覚ますと、私はよく見知った部屋のベッドにいた。
カーテンの隙間からは、うっすらと朝日が差し込んでいる。
「ここって自分の家だよね… 私って昨日…」
ベビーベッドを見れば、勇斗がぐっすりと眠っているけれど…
ダメだ…
勇斗を迎えに行った記憶さえもない
あれ?
圭司はどこに行ったんだろう
会社?
いや、今日は日曜日でお休みのはず…
寝起きの頭であれこれ考えていると、ガチャと扉が開いてミネラルウォーターを持った圭司が入ってきた。
「あ 圭司…」
「なつ 起きた? はい お水…」
そう言いいながら、圭司は私のほっぺたにペットボトルを押しあてた。
「ヒヤッ 冷たい!」
「ハハ 昨日のお仕置き…」
「お仕置き?」
「うん この酔っぱらい…」
「えっ…」
圭司の言葉に、何だか凄く嫌な予感がしてきた。