婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「やだ~ こんなに掘っちゃた~!」
本当はお城のまわりに少しだけ水を流す為の、浅い溝を作っていた筈だったのだけど…
これじゃ、沼になってしまう…
私が穴を埋めようとしたら、勇斗がバケツに入っていた水を流しこんでしまった。
「あー ダメだよ 勇斗~」
その様子を見ていた美咲ちゃんも、自分の持っていたバケツを真似して穴へと流しこんだ。
こうしてできた深い水溜まりの穴で、勇斗も美咲ちゃんもキャッキャと声をあげながら遊び出してしまった。
「うわー もう 泥んこだね 二人とも… ごめんね」
なんだか、美咲ちゃんママに申し訳なくなり謝った。
「いいよ いいよ 今日はもう 思い切り遊ばせちゃおう!」
結局、親子で泥んこになりながら、たっぷりと遊んで帰ってきた。
「うわ~ これちょっと、どうしよう~ とりあえずここで靴下脱ぐか~」
玄関で呟きながら、私はため息をもらした。
何も私まで、こんなに泥んこになる必要なんてなかったよね…
調子にのって遊んでしまったことを、今さらながら後悔した。
「勇斗 今日は先にママとお風呂入っちゃおうね」
シャワーを浴びているうちに、お風呂のお湯もたまるだろうし…
勇斗だって私と入っちゃえば、辛い思いしなくて一石二鳥だしね
私は、久しぶりに勇斗をお風呂に入れた。
「それじゃあ 勇斗 シャンプーしよっか~ 大丈夫 ママはパパと違って恐くしないからね~ さっ ママのお膝においで~」
勇斗にそう声をかけると、勇斗はぎゅっと目をつぶりながら立ったままの姿勢で、ちょこんと頭だけ差し出した。
「えっ 勇斗… 頭からかけちゃってもいいの? 大丈夫なの?」
驚きながら勇斗の顔を覗き込めば、肩を上下に揺らしてすすり泣いている。
「いいんだよ 勇斗… 無理しなくても…」
それでも、勇斗はじっとそのまま頭を出して立っていた。
「じゃあ 少しお湯かけちゃうよ 勇斗…」
私は勇斗の頭に少しだけシャワーをかけて様子をみた。
勇斗は体を強張らせながも、目をつぶってじっと我慢している。
「よし 勇斗 そのまま目をつぶってるんだよ」
私は勇斗の髪にシャンプーをつけ、頭からシャワーで洗い流した。
勇斗はシクシク泣きながらも、最後まで逃げ出さなかった。
「勇斗~ できたね! 頑張った 偉い偉い!」
私は思い切り勇斗を抱きしめた。
そっか
私、圭司に謝らなくちゃ…
できないと決めつけて、甘やかしてた私…
あれじゃ、いつまでも勇斗は水嫌いのままだった。
帰ってきたら、ちゃんと仲直りしよう…
その前に、ラインで先に報告かな
勇斗とお風呂に浸かりながら、圭司の喜ぶ顔を想像した。