婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~

勇斗をお風呂に入れた後、私は圭司にLINEを送ろうと、スマホを開いたのだけど…

「あれ? 松井くんかな これ…」

LINEの「知り合いかも?」のところに、松井健人の名前が出ていることに気がついた。

松井君とは病院でキスされて以来、全く連絡を取っていない。

あの時、松井くんは私の連絡先を消去しているし、私もすぐに携帯を買い替えて新しい番号にしたから、私から電話をしない限りは連絡の取りようはないのだけど…

でも、ここでまた、LINEなんて繋がったりしたら…

どうしたらいいんだろう…
繋がってから、ブロックすればいいのかな…

LINEの仕組みをあまり理解できてない私には、なぜ 急に友達追加になりかけているのかさえも分からない。

あー もしかして、私が松井くんのアドレスを登録したままだから出ちゃうのかな?

そんな結論にたどり着いた私は、松井くんのアドレスを消去しようと電話帳を開いた。

『ピンポーン』

ちょうどそこで、玄関のインターホンが鳴った。

誰だろう?
圭司は自分の鍵で入ってくる筈だから、宅配便か何かなのだろうけど…

ローテーブルに携帯を置いて、インターホンの画面を覗いてみた。

あー 
これは、出ちゃいけないやつだ。

そこに映っていたのは、大きな鞄を抱えた見るからに怪しいセールスマンだった。
新婚当時、この手の人を断り切れずに、水晶みたいなものを買わされそうになった覚えがある。

あの時は、圭司にこっぴどく怒られたんだよね…

よし 居留守を使おう!

そう決めてソファーに戻ると、さっきテーブルに置いたはずの携帯が消えていた。

あれ?
もしかして、勇斗?

ちょっと嫌な予感がして、ぐるりと部屋の中を見回すと…

勇斗が部屋の隅で、私の携帯を耳に当てながら『もちもち』と繰り返していた。

「こらこら 勇斗、ダメでしょー!」

慌てて取り上げたけれど、案の定、電話は松井くんにかかっていたようで…

携帯からは、もしもし?と呟く松井くんの声が聞こえてきた。

『もしもし… ごめんね 松井くん なつですけど…』

私が電話に出ると、一瞬の沈黙のあと、松井くんが声をあげた。

『えっ なつ!? おまえ、なつなのか?』

『あっ うん そう ごめんね 子供が勝手にかけちゃったみたいで…』

『子供って… 今のがなつの子供の声か?』

『うん…』

『そっか おまえ子供できたんだな よかったな』

松井くんは嬉しそうな声でそう言った。
< 33 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop