婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~
「いつからか…? ああ なつが松井のことを頼りになるとか誉めてたあたりからかな…」
圭司は玩具で遊んでいた勇斗を抱き上げながら、皮肉たっぷりににそう言った。
「あっ あの 誤解しないでね… 松井くん、好きな子ができたって言うから…それで」
「ふーん 好きな子ね それも怪しいもんだけど… そもそも、なつは何であいつと連絡なんか取ってんの? 俺のいない間にこそこそ電話して、あいつに愚痴でも聞いてもらってた? 昔からなつは、俺と何かある度、あいつに泣きついてたもんな」
「そんな… 私、連絡なんか取ってないよ… 今日はたまたま勇斗がイタズラしてかけちゃっただけで…」
「へー 勇斗のイタズラで、たまたま松井くんにかかるんだ 凄いね」
「本当だもん 松井くんのアドレス消去しようとして画面開いてたら、セールスの人が来ちゃって、その隙に勇斗が通話ボタン押しちゃたんだよ… どうして信じてくれないの? 今日は勇斗がシャンプー頑張ったから、圭司に報告して仲直りしようって思ってたのに… 圭司と一緒に勇斗のことたくさん誉めて、勇斗の成長を喜こびたかったのに… 酷いよ 圭司… いくら圭司とケンカしてたからって、松井くんに泣きついたりなんかしないよ 私!」
圭司に信じてもらえない悔しさで、涙が溢れてきた。
肩を震わせ泣き出した私を、勇斗が驚いた顔で見ていた。
「ごめん なつ 本気で言った訳じゃないんだ…」
圭司は勇斗を抱いたまま、片手で私を抱き寄せながら呟いた。
「えっ…」
「さっきの電話、もう少し前から聞いてたから、勇斗がイタズラしてかけたって本当は分かってた… けど、なつが、またあいつに気を持たせるようなことを言い出すから、腹が立って、つい意地悪な言い方した。ごめんな…」
「あ うん 私こそ、ごめんない 松井くんが好きな子に告白するって言うから、上手くいって欲しいなって思って… つい」
「でも、なつはさ、前もそれで、あいつに騙されてたじゃん? きっと、またそのうち、相談だとか何とか理由つけて、なつに電話してくるよ 携番だって知られちゃった訳だし…」
いや
今回はそんなことにはならないと思う
だって、松井くんは、もう ちゃんと前に進んでいるように感じたから…
なんて、ここで私がそんなことを言ったら、また喧嘩になっちゃうよね…
「分かった 圭司… もし、松井くんからかかってきても、私、絶対出ないようにするから ちゃんと気を付けるね」
「いや ごめん なつを信用してない訳じゃないんだけど、明日、携帯会社に行ってこよう 確か番号だけ変更できた筈だから…」
「えっ… あ うん」
本気で心配している様子の圭司に、私は頷くしかなかった。