婚約者はホスト!?⑤~愛しい君へ~

ちょうど次の日は土曜日だった為、朝から私は携帯ショップへと連れて行かれ、早速、番号を変更させられた。

「とりあえず、これで、大丈夫だとは思うけど… あいつのしぶとさはゴキブリ並だからな… 油断はできねーよな…」

帰りの車の中で、圭司がブツブツと呟いた。

「えっ ゴキブリって…」

私が思わず噴き出すと、圭司がミラー越しにジロリと睨んできた。

「笑い事じゃないからね… 知ってるだろ? あいつのなつへの異常な執着心… なのになつは、優しいだの格好いいだの余計なこと言っておだてるし… なつもよく自分に無理やりキスしてきた男に、そんなことが言えるよな」

「ごめん でも、キスは松井くんのせいじゃなくて、そうさせた私が悪かったんだし… 圭司だってそう言ってたじゃない…」

「は? 確かに、煽ったなつにも問題はあるとは言ったけど、どう考えたってあいつが悪いだろ! 俺は今でもあいつのこと許してないからね 本当はぶん殴りにでも行きたいとこだけど、また俺が出てくと逆効果になると思って、我慢してるだけだから」

後部座席に座る私に、圭司は声を荒げながらそう言った。
圭司の松井くんへの恨みは、相当なものらしい…

そりゃ、そうだよね…

「うん ごめん…」

圭司は、しばらくの間ムスッとしていたけれど、それでも家に着く頃には大分機嫌も治まっていた。


そして、夕方になり、勇斗のお風呂の時間がやってきた。

「勇斗~ ほら これ! 昨日のご褒美に新しい玩具買ってあげたからね 今日もパパとシャンプー頑張るんだよ~」

脱衣所で裸になっていた勇斗に大きな水鉄砲を渡すと、勇斗はそれを持って嬉しそうにお風呂場へと入っていった。

「すげー あいつ、自分から風呂に入ってったよ… なんだ それなら、もっと早く与えときゃ良かったな…」

キャッキャとはしゃいでいる勇斗を見て、圭司が笑いながらそう言った。

「まあ 水にも少し慣れたし余裕が出たんだよ ねえ 見て! 勇斗 鏡見て一人でかまえてるよ なんか楽しそう」

「じゃあ 今日はなつも、久しぶりに一緒に入ろっか」

圭司が甘い声で囁いた。

「えっ いいよ 私は…」

と、慌てて断ったのだけど、圭司は私の服に手をかけてどんどん脱がしていった。

「ちょっと 圭司 何考えてるの 勇斗いるんだから…無理だからね そんなの…」

勇斗が産まれる前は、よく二人でイチャつきながら入っていて、結局、最後までしてしまうというパターンだったけれど…

いくら勇斗が幼いからといっても、さすがにそんなことできないよ…

「何が? 俺はただ、三人でお風呂で仲良く遊ぼうとしてるだけだけど… やらしいな なつは…何想像したの?」

圭司はニヤリと笑いながら、私の耳元でからかうようにそう言った。

「ちがっ 私は、別に… もう! 圭司がいつもお風呂でやらしいことばっかりするからでしょ!」

真っ赤になって抗議する私の手を引いて、圭司は私をお風呂場へと引き込んだ。

「あー! まんま~」

勇斗は私を見て、驚いたように声を上げた。

「よし 勇斗 ママザウルスが来たから、一緒に鉄砲でやっつけるぞ~」

圭司はそう言いいながら勇斗の手を掴み、私に水鉄砲を浴びせた。

「えっ! キャッ! ちょっと、ひどーい!」

ケラケラと笑う二人に私もお風呂のお湯をかけて応戦しながら、家族でのバスタイムをたっぷりと楽しんでいた。


< 36 / 77 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop